2012-06-23-063108

米国では今、ニューヨーク州に住む68歳の女性が大きな注目を集めている。先日、地元中学校が運行するスクールバスの補助員として働くカレン・クラインさんは、同乗していた男子中学生4人にひどい言葉を次々と浴びせられ、いわば“いじめ”とも言うべき被害に遭った。すると一緒に乗っていた別の生徒が、翌日YouTubeへ一部始終を収めた動画を投稿。あまりの内容に米国内で大きな話題となり、彼女に対して同情の声が多数寄せられているほか、「心の慰めに」と資金調達サイトに寄付ページが開設されると、総額が凄まじい勢いで増え続けている。

米放送局CBSや米放送局NBC系列WPTVなどによると、問題の一件が起きたのは、ニューヨーク州グリースにある中学校が運行するスクールバス内。6月18日、元ドライバーで現在は補助員を務めるクラインさんに、同乗していた12~13歳の男子生徒4人が絡み出したという。すると、その様子をほかの男子生徒が携帯電話で撮影。翌日、YouTubeに「Making The Bus Monitor Cry」(http://www.youtube.com/watch?v=l93wAqnPQwk)とのタイトルで約10分の動画を公開した。

映像の中でクラインさんは、一挙手一投足をからかってくる男子生徒たちに対し、明らかにやるせなく、悲しげな表情を滲ませながら耐えている。そんな彼女に対し、男子生徒たちは「家でおしっこをしてやる」と脅して住所を聞き出そうとしたり、容姿や家族に対する一方的な悪口を発したりと、執拗に罵倒。クラインさんはこの一件を学校に報告していなかったが、投稿された動画が話題になったことで明るみになり、学校や地元警察も実態調査を始める事態に発展した。

そんな辛い思いをしたクラインさんに、多くの市民から、悲しみや同情の声が寄せられている。資金調達サイト「indiegogo.com」には、彼女が心を洗う休暇に出かけて欲しいと、旅行費を集める寄付ページが登場した。その思いに賛同する人は予想以上にいるようで、開設から1週間も経たぬ間に目標額の5,000ドル(約40万円)を軽く突破。現在も1時間に1万ドル(約80万円)以上の伸びが続いており、6月23日時点で総額は55万ドル(約4,400万円)を超え、締め切りの7月20日まで1か月近くの時間があることを考えると、まさに青天井の様相だ。

一方、事件そのものについては沈静化の方向へ。今回クラインさんを心を大いに傷つけた男子学生4人は、すでに学校の調査で特定されているほか、刑事告発がなされるかどうか、警察の捜査の行方を見守っている状況だ。ただ、学生らの情報がインターネットで公表されてしまい、現在4人と家族は命の危険も思わせる「脅迫電話」を次々受ける事態に陥っているという。そんな中学生らの親は、クラインさんに子どもたちが行った行為を直接謝罪しに訪れたとも。家族全員の反省を約束した父親に対し、彼女は脅迫電話を気遣い「あなたは大丈夫?」と声を掛け、共に苦しみを分かち合ったそうだ。

しかし、子どもたちからの謝罪については「心がまだ癒えてない」として、「時間を置いてから顔を合わせたい」と話すクラインさん。すぐには忘れられぬ深い傷を負ったものの、どんどんと膨らむ寄付金など、多くの人から寄せられる励ましの声には「本当に心を和らげてくれた」(米放送局ABCより)と、感謝の意を表した。米国内ではしばらく、クラインさんや学生たちに対する注目は収まりそうもないが、大切なのは当事者同士が再び以前のような補助員と学生の関係に戻ること。早く全員の心にけじめが付けられ、平穏な時間を取り戻してもらいたいところだ。

ナリナリドットコム