ヒグマに襲われて2人が死亡した秋田県鹿角かづの市八幡平はちまんたいの「秋田八幡平クマ牧場」が、クマの譲渡先探しに苦慮している。

 経営者は「資金も体力も限界」と今月中にも閉鎖する考えだが、ヒグマやツキノワグマなど計29頭のクマは行き場のないまま飼育されている。

 同牧場は4月20日の事故後、唯一の従業員だった男性(69)が退職し、現在は経営者の長崎貞之進氏(68)だけが残った。長崎氏は「年間200万円以上の赤字。事故で収入も途絶え、クマを安楽死させることも考えている」と話す。

 長崎氏は秋田県などに譲渡先探しなどの協力を求めた。佐竹敬久のりひさ知事は7日の定例記者会見で、「県に(事故の)責任がなかったと言えない。指導が甘かった」とした上で、餌や引き取り先の確保に協力する意向を表明した。

 だが、現状は厳しい。動物愛護のNPO法人「地球生物会議」(東京)によると、クマを飼育・展示するクマ牧場はほかに1道3県に7か所(うち1か所は閉鎖)あるが、読売新聞の取材に全施設が「引き受けられない」との態度を示した。県も7か所に受け入れを打診したが断られたという。

 約20頭飼育する北海道上川町の「北の森ガーデン熊牧場」は入場者が減り、繁殖させずに自然減での閉園を目指している。北海道新得町の「ベア・マウンテン」は「新しい個体が入ると、元々いたクマが攻撃する」とクマの習性を理由に挙げた。岐阜県高山市の「奥飛騨クマ牧場」は「施設に余裕がない」という。

(2012年5月9日15時28分 読売新聞)20120509-643215-1-L


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