オウム真理教による地下鉄サリン事件で警視庁に殺人容疑などで逮捕された高橋克也容疑者(54)。「オウム最後の手配犯」の逃走劇が思いがけない波紋を広げている。潜伏先から発見された「呪術本」の注目度が急上昇しているのだ。書店には問い合わせが殺到し品切れが続出。有名格闘家も愛読したというその中身は-。


 東京大田区蒲田の漫画喫茶で17年におよぶ逃走に終止符を打った高橋容疑者。今月4日、潜伏先の建設会社(川崎市)の社員寮から姿を消し、15日に捕まるまで、1000万円の懸賞金がかかっていたこともあって世間の高い関心を集めた。それと同時に話題になったのが、同容疑者が潜伏先に忘れ形見のように残していった「呪術本」だ。


 捜査関係者によると、タイトルは『呪術の体験』と『呪術と夢見』(ともに二見書房)で、同容疑者の逃亡の間、テレビのワイドショーなどで高橋容疑者が読んだ本として紹介され、書店に注文が相次ぐようになった。一体、どんな内容なのか。



 「作者は、米国の文化人類学者のカルロス・カスタネダ氏で、ヤキ・インディアンのドン・ファン・マトゥスから受けたという呪術師になるための教えをまとめた連作シリーズです。1968年刊行の1作目『呪術師と私』は、70年代のニューエイジブームを生み出すなどベストセラーとなった。精神世界に関する本の中では、名著に数えられているものです」


 こう語るのは、カスタネダ氏に詳しく、その研究本『カルロス・カスタネダ』(ちくま学芸文庫)の著書がある宗教学者の島田裕巳氏。


 元格闘家でタレントの須藤元気氏(34)も過去、自身の著書で「影響を受けた」として取り上げ、話題になった。


 「今回はその時以来の反響」(書店関係者)だそうで、都内大手書店の売り場担当者は「先週あたりから問い合わせが相次いでいます。有名なシリーズなので常備している店舗が多いのですが、高橋容疑者が読んでいた2冊を始め、一部商品には品切れになるものも出ています」と話す。


 逃亡時に教祖、麻原彰晃死刑囚=本名・松本智津夫(57)=の著作数十冊を持ち出すなど、いまだ教団への信仰心を強く残す高橋容疑者。


 島田氏によると、先の2冊には、同容疑者の興味をかき立てるような記述があちこちに散見されるという。


 「師匠(=インディアンのマトゥス)と弟子だった作者のカスタネダ氏との関係は、そのまま麻原死刑囚と高橋容疑者との関係性に通じる。薬物によるイニシエーション(儀式)や、超能力に関する記述もオウムの教えを彷彿とさせる。解脱するため、修行に明け暮れた彼にとって、本に書かれた世界はリアリティーのあるものだったのかもしれない。麻原死刑囚の本を持ってはいたようだが、新しい本が手に入らないため、代用として読んでいたとも考えられる」(島田氏)


 最後の手配犯は呪術本の中に何を見たのか。

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